8月のブログで、若い頃に観た映画『ネバーエンディング・ストーリー』をきっかけに、原作であるミヒャエル・エンデの『はてしない物語』を読み始めたことを書きました。先日、ようやく最後まで読み終えました。
読む前は映画の記憶もあり、「冒険を描いたファンタジー」という印象が強くありました。しかし読み進めるうちに、決してそれだけではない深みのある物語だと感じるようになりました。
物語の中で、主人公バスチアンはさまざまな経験を重ねながら、自分自身の「願い」と向き合っていきます。
人は誰しも、「こうなりたい」「もっと認められたい」「もう少し先へ進みたい」という願いを持っています。これは仕事の世界でも同じです。目標を立て、それを達成すれば、また次の目標が見えてくる。それが成長につながる一方で、目標を追い続けるうちに「最初に何を大切にしていたのか」が見えにくくなってしまうこともあります。この本を読みながら、ふとそんなことを考えました。
会社であれば売上や利益、個人であれば仕事の成果や評価など、数字で表せるものは非常に分かりやすい指標です。しかし仕事を長く続けていると、数字には表れないものの大切さにも気づかされます。お客様との信頼関係、一緒に働く仲間、積み重ねてきた経験、そして自分なりの仕事に対する信念。これらは目には見えませんが、時間をかけてじっくりと築いていく大切な財産です。
『はてしない物語』の根底には、「自分は本当は何を望んでいるのか」という問いが流れているように感じます。
これは、考えてみると意外に難しい問いです。若い頃の答えと、20年、30年と仕事を重ねてきた今の答えは、おそらく同じではありません。時代も変われば、自分自身も変わっていきます。
特に今は、AIが急速に進化している時代です。調べること、考えを整理すること、文章を作ることなど、これまで人間が時間をかけて行っていた作業をAIが手伝ってくれるようになりました。便利になればなるほど、私たち人間には「何をするか」だけでなく、「なぜ、それをするのか」という本質が問われるようになるのではないでしょうか。
AIはさまざまな答えを示してくれます。しかし、「自分は本当は何を大切にしたいのか」という答えだけは、最後は自分自身で見つけるしかありません。
若い頃に映画で出会った物語を、何十年も経ってから原作で読み直す。同じ作品であっても、年齢や経験によって受け取り方が変わる点に、読書の醍醐味があると感じます。
『はてしない物語』——。読み終えた今、このタイトルそのものにも以前とは少し違う重みを感じています。
「自分は本当は何を大切にしたいのか」。 忙しい毎日だからこそ、ときどき立ち止まってそんな問いと向き合う時間を持つことが、大切なのかもしれません。